やっとパリに降り立った僕。
日本にいる時に予約していた1泊2000円の激安ホテルへ向かいます。
まぁ道も分からないですしね。
暗くなってきて心細いわけです。
ホテルの住所を書いたメモを片手に
なんとか辿り着きました。
今度はちゃんと独り暮らしできる
アパートを探します。
有名なシャンゼリゼ通りの裏道に『BOOK OFF』があるからそこに行けと
日本の先輩が教えてくれてたんです。(ありがとうございます先輩)
フランスの街並みの中にある日本のBOOK OFF
見つけた時は嬉しかった。
店内は日本とほぼ一緒です。
漫画がズラーっとあります。
フランス語に翻訳された漫画もあれば日本語のままのもあります。
僕のお目当ては漫画でなく
壁にかかっている掲示板。
この掲示板は
異国で暮らす日本同士が情報交換したり
日本人と仲良くなりたいフランス人が「フランス語教えます。日本語教えてください。」とか。
日本人を雇いたい会社やお店が求人広告を載せてたりするんです。
掲示板を見て目を止めたのが
「日本人とのルームシェア希望。
住所○○○○
電話番号○○○○
600ユーロ」
何が起こるか分からないですし
知り合いも1人もいないので
最初はフランス人とのルームシェアがいいかな、と即決。
電話したところで会話が成り立たないので
いきなり行っちゃいました。
アパート暮らしの老夫婦でした。
部屋が一つ空いてるから
使っていいよ、と。
最初の夜は歓迎会までしてくれて
有難かったです。( ;∀;)
これで拠点ができました。
次は就職先を探します。
これが難問でして。
BOOKOFFの掲示板に求人広告あるんですが僕は対象外なんです。
だってビザがありませんからね。
だからパリ中のレストランを
片っ端から突撃です。
レストランの前で深呼吸。
チャイムを鳴らして人が来るのを
待ちます。
人が出てきたので。
僕
「アナタノ れすとらんデ ハタラキタイ」
と言いました。
お店の人
「・・・・ビザはあるのか?」
僕 「ない」
お店の人 「よそへ行け」
終了です。
「くっそー」 と思うわけです。
これが毎日数十件。
2週間も続くと心も折れそうになります。
ある時、やっぱりダメで半べそかきながらトボトボ帰っていたのですが
街角にレストランを見つけました。
ダメ元でチャイムを鳴らすとサービスマンらしいフランス人が出てきました。
サービスマン
「何か御用でしょうか」
僕 「こんばんわ、あなたのレストランで働かせてもらえませんか」
サービスマン
「・・・必要ないからお帰りください」
またか、と。
すると奥にいたダンディなフランス人が来て
ダンディさん 「どうした?」
サービスマン
「働かせてくれと言ってます。断ります。」
ダンディさんは僕を見て
「君はビザをもっているのか?」
僕 「ありません」
ダンディさん
「君は中国人か?韓国人か?日本人か?どれだ?」
僕 「日本人です」
するとダンディさん、急に笑顔になって
ダンディさん 「日本人か! 日本人はいいな!」 と
ダンディさん 「うちの店は雇えない、だけどちょっと待っていろ」
そういうと誰かに電話し始めました。
何件か電話した後、ダンディさんが戻ってきました。
ドキドキしました。
ダンディさん 「ここへ行け」
そこにはレストランの名前と住所、電話番号が書かれていました。
僕はこの時、全身に電気が走るような感動を感じました。
深くお辞儀をして、お礼を言いました。
ダンディさん
「日本人はいいやつばかりだ。頑張れよ」
もう日が落ちて
暗くなり始めてましたが
書いてもらったメモ用紙を握りしめて
そのまま教えてもらったレストランに向かいました。
レストランに着いたころにはもう夜
忙しそうにスタッフが働いているのが外から見えたので
落ち着くまで待とうと思い
近くのカフェで時間つぶし。
最後のお客さんが帰ったのを見計らってレストランのドアを開けました。
サービスマン
「こんばんわムッシュー。申し訳ありません。」
「本日の営業は終了いたしました。」
僕
「こんばんわむっしゅー。あー、あー、ここでーはたらくー」
と意思を伝えるために必死。
もう不審者です。
するとオーナーらしき人が出てきてくれて。
オーナー
「話は聞いているよ。入りなさい。」
僕はこの時、心の底からホッとして
ダンディさん、オーナーさん、
そして今までフランスにやってきて
信頼を勝ち取ってきた
日本人の先輩達に感謝しました。
こうしてビザなし岩淵青年は
仕事を得たのでした。
つづく