カグラオーナー のフランス滞在記 6  流血事件編


フランス2店舗めで

1ヶ月くらい過ぎた頃です。

 

 

仕事にも慣れてきて

なんというか

周りが見えるようになるんですね。 

  

その中で気がついたというか 

感じたというか。 

  

 

1人の肉焼き担当

マイクの仕事がおかしい? 

 

 

パティシエは本来

ちょっと離れたとこで

パティシエ専用の場所で

仕事するんです。

 

でも僕は他の部署をウロウロ

してたんで 

気がついたんです。 

 

 

? マイク、なんかごまかした ?

 

  

マイクの仕事に違和感を感じたんで 

それとなく見てました。 

 

 

フォワグラのオーダーが入って。 

 

フォワグラを焼く。

 

 

? 

 

 

なぜか3人前焼いている。 

 

 

? 

 

 

3人前焼いて、2人前をバットに移し

副料理長から見えない場所に隠す。 

 

しばらくして 

別のフォワグラのオーダーが

はいると 

隠したフォワグラを

温めて盛り付け。 

 

 

は? 思いました。 

 

 

フォワグラは非常に繊細です。 

 

焼いた後に常温で長時間保存して

温めてなおすということをやると 

フォワグラは脂分が出て 

カスッカスになります。 

 

しかも高級食材。

お客様もそれなりに支払っています。 

 

 

どういうこと? 

 

 

しかも料理長が不在で

副料理長が見ていない隙だけ。 

起用にタイミングを伺って。 

 

 

だけど。

 

副料理長は見てないけども。

後ろから

僕が見つけちゃったわけです。 

 

 

これが発端でした。 

 

 

料理の提供が遅れれば怒られる。 

だったら

頭を使って考えるべきところ。

マイクは横着をして 

あたかも  

 

お客様を待たせず

しっかりやってますよー! 

 

と演技していたわけです。 

 

品質を犠牲にして。 

 

 

それはいかんだろ

と怒りを覚えました。

 

とはいえ

その場では何も言わず

その日は過ぎました。 

 

 

他のスタッフも知っているのか?

と確認してみたいところですが

 

そんな細かいことを伝える語学力が

ないので 

内に秘めてモンモンとしてました。

  

それに僕は外国人。

見て見ぬふりも生き抜く術か?

 

と自問自答。 

   

 

いやいや、いかんだろと。 

 

 

それはお客様とレストランに対する

裏切り行為だろと。 

 

それでも穏便に済ますことを考えつつ

その日を迎えてしまいました。  

 

 

その日、

マイクはまた

3人前フォワグラを焼きました。

   

また2人前をバットに移し替えました。 

 

 


でもこの日は

料理長ができあがった料理を 

11皿チェックしていました。 

 

マイクもそういう時は

横着をしません。

 

それで

この日の営業も終わりました。 

 

 

皆、一斉に片付け始めたとき 

 

マイクは隠しておいた

2人前のフォワグラを

ゴミ箱に捨てました。

 

 

また間の悪いことに

目撃してしまいました。 

 

 

もうその時は穏便に済まそうなんて

これっぽっちも頭にありませんでした。 

 

 

そこに歩いて行って 

 

 

『これはなに?』

とゴミ箱を指さしました。 

  

 

マイクは一瞬たじろぎましたが 

 

相手は

言葉もろくに話せない日本人。 

 

早口で何か言って

平静を装いました。 

 

  

他のスタッフは

なんとなく僕等を見ています。 

 

 

僕はゴミ箱から

フォワグラを取り出して  

 

 

『いつもやっているのか?』 

 

 

と思わず

日本語で言ってしまいました。 

 

 

マイクもニュアンスで、

 

 

『文句を言ってきている』  

 

と感じたと思います。 

  

  

すると

早口のフランス語でまくし立て始め

 

他のスタッフにもごまかしアピール

 

 

よく分かりませんがおそらく 

 

『言葉もできない外国人が俺に文句言ってやがる』的な。

 

そんな感じ。  

  

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・こんにゃろう・・・・・・・💢 

  

 

 

 

もはやフォワグラ云々じゃなく。

ケンカを売ってきてる感じ。 

 

  

 

プツーンときました。

  

 

  

(僕は自分が外国人なので

下手にはでても

本当に下に扱ったら許さんぞ

という考え)

 

 

さらにイヴォン副料理長なみに

詰め寄ってきたんで

  

  

瞬間怒りレベルMAXに到達。

  

 

(後ずさりすれば

収まったかもしれませんが) 

  

 

突発的に

後ずさりするどころか

1歩前に踏み出てやりました。 

  

 

その瞬間 

 

   

 

 

 

ゴチーーン !

 

 

 

 

 

 

と頭突きをくらわせてしまい 

 

マイクは鼻血をだして流血。 

  

 

他のスタッフが一斉に止めに入って

穏便どころか大騒ぎ。 

 

 

マイクは鼻を抑えてプルプル。 

僕は開き直って仁王立ち。

  

 

 

そこに料理長が来て 

 

  

 

『何があった?』 

  

 

 

マイクは何やらまくし立てているが

知ったこっちゃない。 

  

  

 

『オマエが何を言おうと

俺はさっぱりわからんわ!』 

  

 

  

と日本語で応戦。 

 

   

他のスタッフが

何があったか説明してくれたんで

フォワグラの件でマイクが怒られ。  

 

 

流血させた件で 

 

 

『ダイシュケ、手は出すな』 

 

  

的なことを言われ。 

 

(手はだしていない。 

出たのは頭だ。

と思いましたが。)  

 

 

『ウィ、シェフ』 (はい。料理長。)

 

 

と引き下がりました。 

 

 

この件でマイクは相当追求されて

大目玉をくらったらしく 

しおらしくしてました。

 

 

ケンカしたままは嫌なんで

仲直りしたかったんですが 

マイクは3日後に

レストランから去りました。 

(どうも他にもなにか

やらかしてたらしい)

  

 

日本でもフランスでも

仕事は信頼があってこそ成り立つ。 

改めて思いました。

 

 

この事件の影響で肉焼き担当に

欠員がでました。 

  

 

『うぉ!まさかの配置転換か?』 

  

 

と思ったのですが 

すぐに他のレストランから

助っ人のフランス人が

加入して来ました。 

 

 

彼は凄く仕事のできるやつで 

レストランは一瞬で

元通りの通常運転。 

  

 

まぁ、そんなうまくはいかんと 

特に気にしないで他のスタッフと

洗い場でワイワイ話していたら  

  

 

ここでまさかの事件が発生。 

 

 

目の前から

2人のスタッフが消えました。 

  

 

 

 

? 

 

 

は? 

 

 

 

なんとマンホールの蓋ごと

2人のスタッフが落下。 

  

1人は骨折。(洗い場スタッフ) 

  

警察とレスキュー隊が来るほどの大惨事。

 

 

この時僕は

自分がビザなしであることを

すっかり忘れて警察と一緒に

マンホールを上から

のぞきこんだりして。

 

  

 

この国はホントに何が起こるか分からない! 

  

改めて思いました。

  

 

 

つづく